午後9時。
今日どうしてもやらなければならない仕事は終わった。
フロアに残っているのは、私と、……三神くん。
「橘さんは終わりそう?」
心の声が聞こえたかのように、三神くんがこっちを見た。
「うん、まあ」
三神くんが席を立ち、こちらに歩いてきて、私の向かいの席に座った。
「申し訳ない。余計な仕事増やしたせいで遅くなって」
「大したことないよ。半年前、システムトラブルで全部の発注データが流れなかったときと比べたら、もう、らくちんらくちん」
「……でも、橘さんの数時間を奪ったことになる」
「……まあ確かに」
「……申し訳ない。始末書は書いた。明日部長へ出す」
「私もうちの部長へ報告書送ったし、帰ろうか」
お互い、帰り支度をし。
警備セットをして、フロアを出る。
階段を降りながら、
「疲れたね。ごはん行こうか」
と、三神くんが言った。
やば。
うれしい、かも……。
あちゃー。
これは、やっぱり、あれか。
