恋色シンフォニー


あー、久々にエンジンフル回転で疲れた。
休憩室で、砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを飲んでいると、三神くんがやってきた。
珍しくタンブラーにコーヒーを入れている。
「もう業務終了時間だよ」
「……さっきの始末書出さないと」
「別に今日やらなくてもいいんじゃない?」
「……いや、やってく」
「練習、いいの?」
「音楽家の前に、サラリーマンだから」
そう言って苦笑した姿に、ドキリとしてしまった。
……ああ。まいった。
私はぐびっと甘いコーヒーを飲み干した。
「じゃ、先行くね。がんばろーっと」

「綾乃さん、大丈夫ですか? 手伝えることありますか?」
「私にもできることあったら言って」
デスクに戻ると、渚ちゃんや玲子さんや他のバイヤーたちが声をかけてくれた。
うう。みんな優しい。
「ありがとうございます。でも後はデータセットするだけなので大丈夫です」

午後6時半。
リミットまでにセット完了。
ダブルチェックもした。
システム部と取引先への連絡もした。
よっしゃー、終わったー。
さて、これから、本来の仕事に戻ろう。