恋色シンフォニー


「ね、綾乃ちゃんは音楽経験者?」
「……まあ、少々……」
「なになに?」
「……小さい頃お稽古事のピアノを8年と、大学オケで4年間ヴァイオリン弾いてました」
「ふむふむ。彼氏、いるの?」
はっ? いきなりそこに話がとぶ?
「おりません」
いたら酔い潰れたりしません。
「そっかそっか。オレも彼女おりません」
「意外です」
「あら、ありがと。他に聞きたいことは?」

三神くんのことはきいてみたいけど、でも……いいのかな……

ためらっていると、設楽さんが話し出した。

「じゃ、オレが勝手にしゃべっちゃお。あいつと早瀬マリちゃんはね、かつてのライバル同士。小さい頃からコンクールで何度も競ってきたんだよねぇ。
マリちゃんは高校まではヴァイオリン弾いてたんだけど、指揮者になりたいって言って、音大の指揮科に進んだの」

「三神くんは、音大には……」

「ああ。ご両親が亡くなってたからね。奨学金ていう選択肢もあったけど、お母さんは高3の夏に亡くなったから、受験シーズンには弾ける状態じゃなかった。
もちろん、音大を出ていなくてもプロになってる人はいるけど、それを言うには、酷な状況だったね」