恋色シンフォニー

「改めまして、オレは、設楽龍之介。橘さんのフルネームは?」

「……橘綾乃です」

「綾乃ちゃんか、かわいいね」
誰にでも言っていそうな軽さだ。

「オレは、あいつが小1のときからヴァイオリンを教えてまーす」

ん? そんなに歳の差があるようには思えないけど……
30代に見えるけど、実はめちゃくちゃ歳上だったり?

「オレの母親がヴァイオリン教室やってたの。あいつのお母さんがオレの母親のところへ習いに来てて、あいつも4歳の時から一緒に来てたんだ。
基礎はオレの母親が教えたけど、あいつが小学校に上がってからは、オレの母親があいつのお母さんを教えて、中学生のオレがあいつの面倒を見てたってわけ」

ということは、今は34〜36歳というところか。

「綾乃ちゃんはあいつの彼女?」
「いえっ、違います! 」
力いっぱい否定。
「ただの会社の同期で、昨日会社の飲み会でからんで酔い潰れたところを、泊めていただきまして……。」

設楽さん、爆笑。
恥ずかしすぎる。

「なんだよ、あいつ。サラリーマン生活満喫しやがって。ね、あいつ、会社じゃどんななの?」
「……淡々と仕事をこなして、定時で帰ります」
再び、ケラケラ笑う。
よく笑う人だな。