恋色シンフォニー




庭に出ると、三神くん家は新興住宅地の中にあることがわかった。
どこからか、電車の音がする。

「あの、駅は近いんでしょうか? 私、歩いて帰りますけど……」

「なーに言ってるの! 女の子をみすみす歩かせて帰すなんて、できません! はい、どうぞ」

設楽さんは助手席のドアを開けながら、色気を含んだ流し目で見つめてくる。

……うーむ。
三神くんが気をつけて、と言った意味が分かる気がする。

「それに、橘さんも、オレにききたいことあるでしょ?」

……それは、はい。



設楽さんの車は、スポーティな国産高級車だった。色は、ブルー。

カーステレオで音楽やラジオは流れていない。
エンジン音も上品なので、車内は静かだ。

「どちらまでドライブしようか? 」
「会社に車を置いてあるので、会社までお願いします」
私は会社の住所を言った。
「はーい。楽しく行こう!」
と、設楽さんは笑って車を発進させた。