恋色シンフォニー


指揮者がゆっくりタクトを下ろすと、会場全体が夢からさめたように、拍手が湧き起こった。

「ブラヴォー‼︎」
隣のイケメンが声をかけたのを機に、あちこちから声があがる。

悔しいけど。
私も手が痛くなるくらい、拍手を送る。

指揮者がコンマスを立たせて、拍手に応えさせる。
オケのみんなも足を踏み鳴らし、コンマスを讃える。

三神くんは、はにかみながらお辞儀をする。
そして、客席に向かって視線をあげ……。

カチリ。

目が合った。

にっこり微笑み、
“どう? 見てくれた?”

と、言われた、
……気がした。

気のせいだ。
だいたい、ステージから客席を見ると、暗くてよく見えないはずだもの。

どんだけ自意識過剰なの、自分。

管楽器ソロを讃え、
チェロトップを讃え、
オケ全員を讃え、
前半から大盛況で、休憩時間に入った。