恋色シンフォニー



「お先に失礼します」

席を立つと、フロアみんなの驚いた視線が私に注がれた。

「え……5時半になったよね?」

「綾乃さんが、定時で帰るなんて……」
「今日水曜日じゃないよね。金曜日だよね?」
「具合でも悪いとか……」

そんなに、私が定時で帰ったらおかしい?

その時、フロアの向こうでも席を立つ男がひとり。

「お先に失礼します」

「お疲れー」
「お疲れ様でーす」

あの男に対しては何ともないのに!

「じゃ、帰ります! また来週!」