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最初の一音で、全身の毛穴が逆立った。
下降と上昇を繰り返す、アラビアンなメロディ。
何これ何これ何これ。
そこそこ上手いとか、そういうレベルじゃない。
人生すべてをかけてヴァイオリンを弾いてきた人の音と弾き姿だ。
美しく、研ぎ澄まされた音色。
気品あるお姫様の歌声だ。
楽器が、歌ってる。
弦に吸いつくようなボウイング。
長い腕でかける豊かなビブラート。
全身から発せられるとてつもない迫力に、鳥肌が止まらない。
心の奥底まで揺さぶられ、涙がにじんでくる。
独奏にオケがかぶさり、物語が始まった。
さっきのシェヘラザード姫の語りで、会場全体が曲の世界に飲み込まれている。
アラビアン・ナイトの世界が華麗に展開されていく。
私はコンマスから目が離せなかった。
ヴァイオリンというのは残酷な楽器で、上手いかどうか、弾き姿で分かってしまう。
コンマスの弾き方は、とてもきれいで、いつまでも見ていたいと思わせる魔力がある。
ピチカート(指で弦をはじく奏法)でさえ、美しい。
