恋色シンフォニー



「マリさんの旦那さんに会ったよ」
ごはんを食べながら報告する。
「圭太郎の演奏、とても魅力的で楽しかったって」
「ほんと? うれしい」
それはそれは嬉しそうに圭太郎の顔が輝く。
「あの人、小さい頃から家にある膨大なレコードコレクションを聴いたり一流演奏家のコンサートを聴いて育ったらしく、すごく耳が肥えてるんだって、マリ……早瀬さんが言ってた」
「もういいよ、名前で呼んで。私もマリさんと連絡先交換したし」
「え」
「嫌?」
「別に、いいけど……」

嫌そうだ。
話題を変えよう。

「それとね、設楽さん、メンコンの後、“やられた”って涙ぐんでたよ」

圭太郎が、少し固まる。
反応に困ってるみたいな。

「……そう」

それだけ言うと、ごはんを口に入れた。

「設楽さんのお母様、楽しい人だったね」
再度話題を変える。
「そうでしょ?」
やっと圭太郎が笑ってくれた。