そうして、ヴァイオリンソリがやってくる。
緊張した面持ち。
僕は息を止めて見守る。
がんばれ。がんばれ。
たったひとつのフレーズでも、きっと、彼女にとってはとてつもなく大きな数小節。
……初めて、龍之介の気持ちが分かった気がした。
自分が弾く緊張のほうが、どれだけましか。
そう。ピアノと一緒に、寄り添うように。
うん。上手。ちゃんと歌えてる。
……じんときた。
「……なかなか度胸あるじゃない」
マリがつぶやく。
確かに。
最初の音程が不安で、びびって弱い入りになってしまうことはよくあるのに、出だしから、思い切って出してきた。
さすがだ。
惚れ直したよ。
