恋色シンフォニー


『……って言ったら、どうする?』
「どういうことだよ」
『あなた、綾乃さんの前で、私のこと、何て呼んだ? だからあなたは気がきかない音楽バカ……』
僕は最後まで聞かず、走り出していた。




合宿の夜。
といえば飲み会だ。

「アタクシのナイスアシストのおかげで、あなたのメンコンもずいぶんましになってきたじゃない?」
マリがワイン片手にからんでくる。差し入れと称した持参の高級ワインだ。このセレブめ。

「わりーわりー、遅くなりましたー」
「加地さん! お疲れ様です!」
「なんだよ、加地。飲み会から参加かよ!」
「コンマスは?」
僕は手をあげて加地さんに合図をした。



「ほい。ご依頼の品」
「ありがとうございます」
会議室のDVDプレーヤーに、ディスクを入れる。
何故か、マリもついてきた。

「大学オケの定期演奏会?」
「オレが4年の春です」