「あのね。トップから言わせてもらえば、サイドに置くなら、絶対に信頼がおける人間。しかも、コンマスソロがある曲なら、特に。選ばれたことに、自信を持っていいよ」
「違うよ。単に私に主張がなくて、トップが弾きやすかっただけだと思う」
「弾き方に癖がないのはもちろん、譜面をきちんと読めて、リズム感がよくて、周りの音をちゃんと聴けて、何より度胸があったから、だそうだけど」
「はっ？」
「コンミスに直接きいた」
な、な、なんて⁉︎
「えっちゃんと話したの⁉︎」
えっちゃん。
私の代のコンミスだ。
「加地さんが連絡とってくれた。今は北海道のアマオケでコンミスしてる。綾乃によろしくって」
開いた口がふさがらない。
「……なんで、そこまで……」
三神くんに顔を覗き込まれる。
優しい笑顔で、頬をなでてくれる。
「……だって、綾乃をどうしても手放したくなかったんだ」
……この人には勝てないや。
ここまでしてくれる人を手放したくないのは私も同じだ。
