恋色シンフォニー

ああ、ちゃんと言わなきゃ。

「三神くん、あのね……」

「うん」
頭を撫でるのをやめずに、三神くんが優しく返事をする。

「私……、弾いた曲は、苦しくて聴けない……」

声が震えた。

「うん」

頭の上で、三神くんが優しく返事をする。
勇気づけられ、がんばって言葉を続ける。

「こんな私……三神くんの彼女でいる資格も自信も、ないと思って……」

「その反応は、音楽に全身全霊傾けてきたからこそだよ。
僕の彼女の資格は充分ある。自信持っていい」

力強く断言される。
思わず、無条件にそうなんだ、と納得してしまうような。

「聴きたくなければ聴かなくていい。いつか聴こうと思える日まで、曲は待っててくれるから」

「でも……」

「待てないっていうのなら、僕が思い出を書き換えてあげる。今日ので、リストのピーコン聴いたら、僕のひどい仕打ちを思い出すでしょ? ……とはいえ、ちょっと手荒で悪かったとは思ってる。ごめん」

「ほんと。古傷えぐって説得するとか、ありえないんだから……。
でも、今日話したかったのは、このことなのに、なんで……」

なんで先回りして、私の欲しかった言葉を言ってくれるの?

「綾乃、言ったでしょ。僕の彼女の資格がないって。ちゃんとあるって証明したかった」

……覚えてたんだ、私の言葉。