恋色シンフォニー


曲は展開部へと進み、クラリネットがメロディを歌い、ピアノが応える。

そして。
その部分がやってくる。

三神くんに、きつく抱き締められる。

「大丈夫。僕がいる」

優しく、強い声。

私は三神くんの胸に顔をうずめ、背中に手を回し、しがみついた。



ーーーヴァイオリンがメロディを歌う。
数小節の短いフレーズ。

ボウイングも、フィンガリングも、身体が覚えている。


眩しいライト。
ライトを反射して光るグランドピアノ。
木の床。
楽譜。
指揮者。
ピアニスト。
隣のコンミスのブレス。
緊張で震える指。



今まで閉じ込めていたステージの記憶が一気に噴き出してきて、あまりの鮮やかさにくらくらする。



ヴァイオリンからピアノにメロディが移ったところで、三神くんが腕を伸ばして、曲を止めた。

沈黙が落ちる。