1LDK。居間とベッドがある寝室とは、引き戸で仕切れるようになっている。
いつもは開けっ放しだけど、今日はさすがに閉めました。
「ここが綾乃の部屋か〜」
三神くんはうれしそうに、キョロキョロしている。
会わない間の休日、モヤモヤ解消にと掃除しまくっておいてよかった……。
「座ってて」
声をかけ、キッチンに向かう。
「うん」
三神くんは、私のCD棚をじっと見ている。
「曲かけていい?」
軽い口調できいてくるので、
「いいよ」
と答えた。
私は麦茶を入れたグラスをキッチンから運び、テーブルに置く。
……が、聴こえてきた曲に、血の気が引いた。
ミニコンポの前に立っている三神くんを見る。
「なんで……」
「置いていないはずなのに? このCD、僕が持ってきたから」
澄ました顔で、しれっと答えられた。
「止めて。この曲、聴きたくない」
頭がぐるぐる。
胃がぐるぐる。
苦しい。
「リストのピアノ協奏曲第1番。
綾乃が大学オケで弾いた曲だね」
もう我慢できない。
CDを止めようとすると、三神くんに抱き止められた。
「もう少し我慢して」
「やだ!」
首を振り、腕をふりほどこうとする。
これ以上はだめだ。
あれが来る。
