「綾乃、僕、もう、我慢の限界」
「え、何が? 私の話、まだしてない」
「今日はもう遅いし、今度ゆっくりきかせて?」
「うそ、もう11時⁉︎ 明日仕事なのに! ごめん!」
慌てて立ち上がろうとする私の腕を、三神くんが掴んだ。
いつの間にか、ヴァイオリンケースが地面に置かれている!
ちょっと待った! 直置きとかありえないから!
「みっ、三神くん、楽器!」
「また、僕より楽器のこと?」
あ、まずい。
色気オーラ満開にしてる。
「三神くん、ここ外だから……」
「誰も見てない」
確かにこの時間、人通りはほとんどない。
「いや。そういう問題ではなくてですね」
「じゃあ、外だから一応きくよ」
「何を?」
「抱き締めてキスしていい?」
