恋色シンフォニー

「わー、、、派手じゃないのに、お化粧してる感が……」
「よくお似合いですよ。彼氏がもし変なこと言っても、照れてるだけですからね」
「えへへ」
想像してるんだろう、顔がにやけている。
いいな、幸せそう。

「そういえば、三神さんもどこかのお店に行ってるんですか?」
「ええ」
品出しで、指を痛めてないといいけれど。

「最近、ちょっと調子落としてるみたいで。人間ですから好不調の波があって当たり前なんですが、三神さん、今までそういうのあまりなかったので。あたしたちは、三神さんも人間だったんだね、なんて言ってほっとしてますけど。
でもこの間は指揮者の早瀬さんにだいぶやられてて、ちょっとかわいそうでした。もちろんみんなの前でじゃないですけど」

頭をガン、と殴られたような気がした。

三神くんが……。

「あ、お仕事中に関係ない話してすみません! これ、全部ください!」
「え? 別にいいんですよ。よく考えて、また次にいらした時にでも……」
「いーえ! あたし、どうせ買うなら橘さんから買いたいんです!」

……この台詞は、販売員にとって一番嬉しい。

結局、メイクグッズ一式に加え、ポイントメイクアップリムーバーとクレンジング剤までお買い上げいただいた。