恋色シンフォニー




私のマンションに着くと、夕方だった。
設楽さんは車に残り、三神くんが部屋まで送ってくれる。

私の部屋のドアの前で、三神くんに向き直った。
「ここでいいよ」
「ちょっと話がある。玄関でいいから、中に入れてくれる?」
低くて、固い声。

私は無言で鍵を開けた。
夏の陽射しに照らされ続けたマンションの部屋はムッとする。

狭い玄関で向かい合う。
空気は暑いし、暖色灯なのに、私達の間に流れる空気は、……冷たい。

三神くんの不機嫌な雰囲気に気押される。

「今日は、ごめんなさい。せっかくの、早瀬さんの演奏会だったのに」

顔が見られず、うつむいて謝った。

「仕事、忙しいのは分かるけど、ちゃんと食べて、寝ること。特に夏なんだから」

違うの。
今日のは……。

でも。
どう説明したらいいのか、分からない。

迷ってると、三神くんが言った。
「わかった?」
少し、怒った口調で。

「……わかった」