恋色シンフォニー

しばらくして、ひとり、走り出てきた人影。

「綾乃っ」

三神くんがこちらに向かってくる。
胸がキリキリする。

「ごめん、大丈夫?」
「ばーか、おせーよ」
「出るタイミング逃して……」
「反射神経鈍いんだよ」
「うっさい」

三神くんが私の前でひざまずき、顔をじっと見つめてくる。

心配そうな、
少し怒ったような、
大好きな人の顔。

どうしよう。
泣きたくなった。

慌てて視線をそらす。

「顔色悪い」
「ごめんなさい……」

少し声がかすれたけど、頑張って言葉を続ける。

「でも、少し休めば平気だから。2人とも4楽章から戻って?」

「無理しない方がいいよ。オレの車で送ってく」
「綾乃、そうしよう?」