恋色シンフォニー


休憩時間に入る。

先に席を立ったのは、三神くんだった。

何だか声をかけづらい雰囲気……。



私がトイレから客席に戻り、通路から席を見ると、三神くんは既に座っていた。

だけど……。

私の足は止まってしまった。

三神くんは、真剣な顔で、ステージをじっとにらんでいる。

初めて見る……。

何かを考え、挑むような視線。
ピリピリした雰囲気。

……これが、音楽をする、三神圭太郎の本来の姿なんだろうと思う。

会社でも真面目な顔はしてるけど、雰囲気の鋭さが全く違う。

人間に、いろんな顔があるのは当たり前。
でも。
あの顔を私が見ることは、たぶん望まれていない。
きっと早瀬さんには見せているだろうと思うと、胸がチリチリする。

……気持ちを持て余して、また客席を後にした。