恋色シンフォニー

第2楽章は、ゆったりと、甘く美しい旋律がうたわれる。
……はずが。
どこか緊張感をはらんでいる。


第3楽章。
序盤、オケとヴァイオリンソロが交互に出てくるけど、設楽さんはオケの音量に負けないくらいのバカでかい音を出すのでびっくりする。
2階席にも音がビシビシ飛んでくる。
あんなに小さな箱を、どうやって鳴らしたら、こんなバカでかい音が出るんだろう。
楽器はもちろんいいものに違いないだろうけど。

かっこいい曲を、かっこよく弾きこなし、小さなヴァイオリン一挺でプロオケと互角に渡り合う技術と精神力と体力。

ソリストってすごい。


ーーーあ。変わった。

と思ったのは、中盤。
ソロヴァイオリンとオケが重なった、とでもいうんだろうか。
一体感が出てきた。

設楽さんが初めて笑顔を見せた。

どきっとする。

設楽さんと三神くんが重なる。

三神くんと早瀬さんが、練習で熱い視線を交わしてる姿や、笑い合ってる姿を想像したら……胸が苦しくなる。

本番でも、絶対、嫉妬せずにはいられないと思う。
卒演のチャイコのときも、ちょっとだけコンミスに嫉妬したくらいだもん。

……恋が切なさをもたらすことは、わかっていたけど。
それでも、つらいものは、つらいなぁ。


……だめだめ。音楽に集中しなきゃ。
こんな機会、滅多にないんだから。