ステージにオーケストラの団員が出てきた。
楽器の総額と、各自子どもの頃から今までに費やしてきた練習時間に想いを馳せると、プロオケの演奏会の値段が高いのも仕方ないかなぁと思ってしまう。
チューニングが終わり、拍手とともに、指揮者の早瀬さんが颯爽と登場。
黒い燕尾服は、シルエットがオシャレ。すらっとしたスタイルに沿った、品の良い形。
低めの細いヒールの靴。
長い黒髪を後ろで結い上げている。それも何やら複雑な結い方だ。
さりげなく女子力が高い……。
彼女は微笑みながら客席を見渡し、お辞儀をし、オーケストラに向き直る。
背中には何百人もの観客。
前には100人近くのオーケストラメンバー。しかも各楽器のスペシャリスト。
よくまあ、落ち着いて、自信に満ちた振る舞いができるものだと思う。
とてもじゃないけど、私だったら耐えられない職業だ。
