「お疲れ様」
「っ⁉︎」
突然の声に目を開けると、三神圭太郎が立っているではないか!
全然気づかなかった!
アワアワ。姿勢を慌てて戻す。
「ごめん、寝てた?」
フルフル。首を横にふる。
ハッとし、スマホから流れる曲を止めようとすると、
「消さなくていいよ。オルガン付き、好きなの?」
と、三神くんが言った。
知ってるんだ、この曲。
適当に答えようかと思ったけど、サン=サーンスに申し訳ないので、正直に答える。
「大好き」
「うん。いい曲だよね」
三神くんがにっこり笑って言うものだから。
あら。分かるんだ。
と、うれしくなった。
今日は、三神くんとの間の壁を感じないので、軽く話しかけてみる。
「三神くんは今頃どうしたの?」
「東京に展示会に行ってたんだけど、電車が止まって、やっと帰ってきたところ」
「大変だったね、お疲れ様」
「橘さんはまだ帰らないの?」
「はは。まぁね。月曜日の会議の資料、作らないと」
三神くんは少し考えると、言った。
