「っえ、ちょっと。
てことは、神峰君も感じるの?」
「あぁ。初めて感じたのは、昨日こいつのコンクールを見に行ったときだ。それを確かめたくて、今日、弾き合いを申し込んだというわけだ。」
「そうだったのね…。…それで?」
「やはり、俺の勘違いだと思ったよ。
…最後の和音を聴くまではな。
それを確かめたくて、こいつとさっき、話してた。」
机運びを口実にして。
「なんて聞いたの?」
「お前は何を背負ってるんだ。って。」
「えっ?出会って間もないのに?
それって、ある意味プライバシーの侵害だよ? 」
…だよな。
「同じような事をこいつにも言われたよ。」
「ふぅーん、まぁいいわ。
でも、それが倒れた原因にはならないでしょ。」
「あぁ、だよな…。」
「他に何かなかったの?」
「そういえば、俺が、片瀬怜子の話をしてから、少し顔色が悪くなった気もする。」
「片瀬 怜子、ピアニストね。」
「あぁ。
それからこいつが、俺の両親のことを聞いてきたから、今度は俺がこいつの両親について聞いたんだが、…。あと、記憶がないことも聞いた。」
「あぁ、それは、私も前聞いたことがあるわ。
でも、その時、変わった様子なんてなかったわよ。」
「今日も笑いながら話してたんだが、顔色がだんだん悪くなって倒れやがった。」
本当に焦った。
「そうだったのね。
よく分からないけど、多分本人も分かってないと思うから。
それに、ただ体調が悪いだけかもしれないし。
純怜のこと、気をつけておくわね。」
「あぁ、俺もそのつもりだ。」
俺のせいみたいで胸くそ悪いからな。

