君色のソナチネ





ー奏sideー


「それで、何があったの?」


養護教諭が出ていくと、春咲が聞いてきた。


「なぁ、春咲はこいつの演奏聴いててなんか感じるか?」


質問で返す。


「え?どういうこと?
純怜の演奏は、曲の世界に引き込まれる。っていうことでいいのかしら?」


「いや、それはそうなんだが…。」


「うん?」


「こいつが演奏してるとき、たまに、一瞬なんだが、心が張り裂けそうなくらいの悲しみを感じないか?それも、なんていうか、…曲の外で。」


「…曲の外?」


「あぁ。
こいつは、嫌でもその曲の世界に引きづり込むだろ?

でも、ふと一瞬だけ、その世界とは全然違うところで、大きな悲しみを感じるんだ。

その悲しみが何処から来ているのかは分からない。

彼女の心の底からかもしれないし、ただ単に俺の勘違いかもしれない。」


俺の話を聞いて、春咲は暫く黙っていた。


「…そう言われてみると、私も初めて純怜の演奏を聴いた時、一瞬だけど、''助けて''って聞こえた気がしたわ。

でも、みんなに聞いてみても、
''そんなの聞こえなかったよ〜''
''華菜の勘違いじゃない?''
って言われて、その後純怜も普通だったから、私の勘違いだったんだと思ってすっかり忘れててたわね…。」



「…そうか。」

やはり何かありそうだな。