「それで、さっき言ってた、あんたが心動かされた人ってもう一人は誰なのよ。」
「ピアニストの片瀬 怜子[katase reiko]だ。親父のDVDで見た。」
ん?なんか顔が曇ったか?
「へぇ〜、たしか、あんたのお父さんもピアニストらしいね。お母さんは?」
「あぁ。お袋は、ヴァイオリニストだった。今は、音楽の世界からは退いているがな。お前の両親は?」
「へっ、あっうち?
うちは両親ともいないの。」
純怜の顔が少し青くなる。
そうなのか。
「辛いこと思い出させて悪かった。」
「いや、大丈夫。
私はじいちゃんとばあちゃんが育ててくれたし、物心ついたときから、両親いなかったから、これが普通なの。
ばあちゃんから、両親は病気でなくなったって聞いてるけれど、本当かどうかは確信が持てないでいるんだ。」
どういうことだ?
「私、昔の記憶がないの。」
は?
「ピアノの弾き方だけは、何故か体が覚えてるっているか…、」
そうやって、笑いながらいう彼女。
しかし、どんどん顔色が悪くなっていく。
立っていることが辛いのか、壁に寄り掛かるが、
「おいおい、大丈夫かよ。」
そう言って、肩に軽く触れようとした時、そのまま床に倒れ込もうとする。
「っちょ、おい!」
間一髪、彼女の身体を受け止める。
急にどうしたんだ?
俺は純怜を抱いて、保健室へ向かう。
ってか保健室ってどこだよ。
そう思って、焦っていると。
「神峰君、どうしたの?
っっ純怜⁇ちょっと‼︎大丈夫⁇‼︎」
「話してたら急に倒れた。
詳しい話はあとだ。春咲、保健室まで案内してくれ。」
「うん、分かった。
純怜のこと、落とさないでよ‼︎」
はぁ?
「落とすわけねぇだろ。」
まぁ、それほどこいつも心配してるんだと思い、それ以上は言えなかった。
何でもっと早くこいつの異変に気付いてやれなかったのか。
顔色が変わったのはいつからだ?
くそっ、思い出せねぇ。
やっぱり何かあるのか?
全速力で保健室へ向かった。

