「姫様!何をなさってるのですか!」

「あら、春陽。お話合は終わったの?」

小咲は手を動かしながら後ろを振り向き春陽に聞いた。

「まぁ、終わりましたよ。でも今はそんな事いいんです。何をなさってるんですか姫様。」

「春陽が姫様って言ってる間は私、教えませんわ。」

「あなたはまたそうやって…小咲様、何をなさってるのですか?」


「何って見て分かりません?木に引っかかってしまった鞠を梯子で採っているのよ。」

彼女はさっき莉乃と鞠で遊んでたのが引っかかったと言うのだ。

春陽は大きく一つため息をついて

「そんなの莉乃にやらせれば良いでしょう。」

「あら、その莉乃はお話合いに急に出る事になってバタバタと言ってしまったのよ。」

「…。」

そうなのだ。莉乃は小咲と鞠で遊んでいる途中に春陽によって話合いに呼ばれたため、不在だったのだ。

「…小咲様、降りて来てください。私が代わりにお取りしますので。」

「いやですわ。もう直ぐで取れそうなんですのよ?」

小咲は安定のしない梯子のうえで背伸びをしたり手を懸命に伸ばして鞠をつかもうとする。

春陽はそんな姫をとても可愛く思う一方、そんな姫がいつかは怪我をするんじゃないかととても心配だった。

そんな時だった。

「あ!」

鞠が取れたその時、小咲が乗っていた梯子が崩れ、足場をなくした彼女は地面へと放られた。

「姫様!」

「だから言いましたでしょう、私がお取りしますと。」

「春陽、ごめんなさい。…助けてくださってありがとう。」