校門前から、美空とヤツの声が聞こえてきた。

「じゃ、行こうか」

楽しそうに話す声。
くっそムカつく。

「美空、手、繋ごう」

「うん、そうだね」

俺はずんずん美空に近づいて、後ろから彼女を抱きしめた。

「おい美空」

「ん、瀬田?」

驚く美空と、随分下から俺を睨みながら文句を言うチビ。
なんだ、律ってこいつか。

「なんだお前。
美空に触るなよ」

「お前こそ触るな、美空は俺のだ。
覚えとけ、チビ」

俺は勝ち誇った顔をして、チビを見た。
チビは悔しそうな顔をしながらも、美空と繋いだ手は離さなかった。

「……瀬田君、そんな小さな男の子にまで妬いてるんじゃないわよ。
その子、さっき言ってたおじさんの息子さん。
つまり、美空の従兄弟、5歳児よ?」

鈴木は呆れた瞳を俺に向けていた。