家に帰って、
私はまっすぐに2階の部屋に向かう。
コンコン、とノックをして、扉を開けた。
背を向けてギターを弾いている
お父さんに向けて、私は声をあげた。
「お父さん、ちょっといい?」
私に気づいたお父さんが、
演奏をやめて少しだけ振り返った。
「お話があります。大事な話なの」
私がそう言うと、お父さんは
私の向かい側に座って、私の言葉を待った。
私は震える手を深呼吸して落ち着かせると、
目を逸らさずに口を開いた。
私の今の状態のことを話すと、
お父さんは少しだけ眉を寄せて反応を見せた。
それでも冷静な表情は変わらない。
この有無を言わせないお父さんの
プレッシャーが、私は怖い。
だけど今日は不思議と、
そんなプレッシャーでさえ、
私を奮い立たせる勇気に変わっていた。
大丈夫。言える。ちゃんと言える。
自分で決めたんだもの。大丈夫。
「それで私、もっとカウンセリングの治療も頑張る。
ピアノだって、勉強だって頑張る。
病気を治せるように頑張るから、
春からまた、大学に通わせてください」
黙ったままのお父さんは、私の目をじっと見据えた。
「ちゃんと卒業したい。
病気に負けたまま諦めたくない」
「治らなかったらどうする?」
「治してみせる!
だから私にチャンスをちょうだい」
私にとって大きな壁。
何を言っても正論で返すお父さんの壁。
しばらく静寂が訪れた。
そうして口を開いたお父さんの言葉で、
私の未来が変わった―


