恋より先に愛を知る






12月5日。


とても静かな朝でした。


階段の下から15段目。


閉じていた目を開けて、私は空を見あげた。


「雪、ちゃんと降ったかな・・・」


そんな力のない言葉を、ぽつりと呟く。


「降らないだろうな」


微かに笑う私の目に、1人の少年が映った。


「あかね!」


「海斗・・」


海斗は息を切らせて私を呼ぶと、
階段をかけあがってきた。


海斗は冷たそうに手を赤く染めて、
上着も着ないでそこにいた。



私は立ちあがって海斗と向かい合う。


海斗は私をじっと見つめると、
勢いよく頭をさげた。


「海斗!?」


「ごめん!俺、お前のことずっげえ傷つけた!!
 ただ俺は・・・お前のこと、本気で好きになったんだ。


 それを・・・そんなやつに負けんのかって思うと
 悔しいっつうか、腹立つっつうか・・・

 とにかく、本当にごめん」



海斗は口早にそう言うと、一息おいてまた続けた。


「葵のこと忘れたわけでもねえし、
 中途半端にお前を好きになったわけでもねえ。


 これだけはわかってほしくて・・・でも、俺馬鹿だよな。
 葵はもういねえのに、引きずってばっかで、
 似てるお前を好きになって・・・卑怯だよな」



海斗が手を強く握りしめたのを見て、
私は深く息を吸うと海斗の顔を覗き込んだ。


「海斗、ありがとう。あんたがいなかったら、
 きっと私も東京になんか行けなかったし、
 大事なものも捨てちゃってた。


 色々と助けてくれて・・・それから、
 好きになってくれてありがとう。


 でもね?私はやっぱり、
 あんたの気持ちには応えられない」



「あかね、お前本当に・・・それでいいのか?」


「うん。私が自分で決めたことだから頑張る。
 だからあんたも、気持ちに
 整理がつけられるように頑張りな?


 大丈夫。卑怯なんかじゃない。
 あんた、見かけによらずいいやつだし」



私が笑うと、海斗は顔をあげて私を見つめた。