恋より先に愛を知る




“愛”とは何か。





じっちゃんは私にこう教えてくれた。


ただ好きだという感情のことではない。


一緒にいたいとか、

この人と結婚したいとか、


そういうことでもない。



それを一概に“恋”と呼ぶ。



胸のドキドキと、
それに伴う嬉しさと、哀しさ。



手を繋いで、

キスをして、

抱き合って。



“愛してる”を言い合うことを、“恋”という。








じゃあ“愛”って何か?





相手を思いやること。


自分の幸せではなく、
相手にとっての幸せを考えること。


そのために、自分の気持ちを抑えること。




「ただ、我慢するってわけじゃない。
 気持ちを抑えるってことは自然と

 “そうしたいんだ”って思えることだ」




会いたいとか、

一緒にいたい、

好きって言ってもらいたい、



そんな思いを後回しにしてでも、
相手に笑っていてほしい、

幸せでいてほしい、

そう思える感情が、“愛”。





それが、私の“恋”の正体?



「そりゃあ、その男と噛み合わないはずだ。
 色んなズレが生じてるんだろうなあ。


 あんたの感情が、わからないんだよ。その男には。
 そりゃそうだ。まだそいつは“愛”を知らない。


 だから理解できない。それは仕方のないことだ」





「私、初めてこんなに真剣な恋をして・・・
 だから大事にしたくってそれで・・・っ」



「あんたの話を聞いた限り、あんたは“恋”をすっ飛ばした。

 憧れから、気になりだして、
 気づけばお前さんは“愛”を知った。


 恋する期間なんて、あっという間に
 通り過ぎるくらいの強い“愛”をな」










また、頬を涙が伝う。




苦しかった。





なんで?なんで?





どうして報われないの?





そんな思いで胸がつまって、
ずっと苦しかった。






それが今、解かれたような気がした。