私が落ち着いてから、
じっちゃんは私に話をしてくれた。


何があったのか、私はじっちゃんに深く話していなかったけれど、
じっちゃんは私の様子から

何があって病気になったのか気づいていたらしい。


だから、海斗に触るなって言ったんだ。


私が混乱するのを止めてくれたんだ。


じっちゃんと二人で階段に座り、
その下ではあの日のように海斗がいた。


海斗はショックと動揺を隠しきれず、
ハルさんを抱いてぼーっとしていた。


「ハルが引っ掻いたのかい。
 すまんね、痛かったか?」


「ううん・・・。痛くない」


「海斗には、話してないよ。あいつも男だからな。
 女の子としてはそんな話、
 むやみにしてほしくないだろうと思ってね」



「ありがとう・・・でも私、
 海斗に悪いことしちゃった・・・」



「そうか。それだったら少しでいいから、
 海斗と話してやってくれないか?

 なんでもいい。会話をするだけでいい。
 そしたらあいつだって普通に接するようになるさ」



「・・・うん」


じっちゃんが海斗を呼んで、
海斗が気まずそうに私の隣に座った。



「あ・・・ごめん。一段ずらそっか?
 ここじゃ間隔あけらんねぇし」



「もう大丈夫。ごめんね・・・」



海斗は私の隣にゆっくりと腰をおろすと、
私に笑ってみせた。



「どこも具合悪くねえ?大丈夫?」


「うん。ありがとう」


「俺さぁ・・・・」



海斗が呟いて、
それから大きなため息に似た息をついた。



「前に好きなやついるって言っただろ?」



来た、と思った。



海斗の恋の話。



病気だった彼女との、辛い経験。



私は息をのんで海斗を見つめた。



「そいつさ、葵っていうんだ。
 葵には病気があって、いつも病院にいた」




海斗はゆっくりと話し始めた。