恋より先に愛を知る




どうして?なんで来たの?


泣くな。


泣くな、私。



和輝は笑って、私を見た。


「どうした」



その声があまりにも、優しくて。


一緒にいた日々が、鮮明に思いだされる。




『ねえ、和輝ー』



『どした?』



『なんでもない』



『なんだよ。どうした?』





あの頃と、一緒だ。



私の大好きな声だ。



私は深呼吸をして、
震える手を胸の前に翳した。


「なに?」


ゆっくりと、慣れない手話を使って、
私は話し始めた。



【来てくれて嬉しかった。でも、どうして来たの?】



「え?」



【あなたは、まだ私のこと、好き?】



和輝は真剣な目でまっすぐと、私の手を見つめていた。



わからないのも当然。



だから伝わらなくてもいいと思った。



伝わらないほうが、和輝にとってはもしかしたら
そのほうがいいのかもしれない。



【私は、あなたのこと・・・好きよ。】


「なんて言ってるの?わかんないよ」



【私は、あなたのこと・・・愛してます】



「あかね、紙に書いて」



【今までも、これからも、
 あなたのこと、ずっと愛してます】




ノートを手渡す和輝。



だけど私は構わず続けた。




【できれば私はこれからも、一緒に歩いていきたかった。
 

 あなたは、私がいなくなっても平気?
 

 もうあなたの中に、私は少しもいない?】





「なに?俺のことが好きって?」



その言葉に、私はまた、
手話で示してみせた。




【私は、あなたが好きよ】



「これは何?」




和輝が真似してやってみせたのは、
“愛してる”のサイン。





【愛してます】




私が口を動かしても、
和輝はわからずに顔をしかめた。




これはもうしょうがないよね。



私は一つ息をつくと、和輝の手をとった。