あっ、これ1番好きな曲・・・。
落ちていた気分が少し上がりかけたのに、
それは束の間の喜び。
私の自由で開放感溢れる時間は一瞬で奪われた。
「嘘だろ。全然そうは見えないけど。
大学2年?てことは20?」
だめだ、これは。
無視っていう最高の手段が使えない。
半ば諦めて、私はまたペンを取った。
【あと3ヶ月で20】
「ふーん。早生まれか。あ、俺は18!」
いや、そんなの分かるわよ。
男は馴れ馴れしく私の隣に座ると、
私の方をじっと見つめた。
【何?】
「・・・なぁ、アンタ喋んないの?」
いきなり核心をついてくるこの男を、
会って間もないけど私は心底嫌いだと思った。
なんでこいつはこんなにあたしに構うの?
どうしてこんなにしつこく私の視界に入ってくるわけ?
男なんてみんなそう。
興味本位で誑かそうとして、
面倒なことを知ったら離れるのよ。
こいつだって同じ。
なあ、アンタ喋んないの?
それに私が答えたらふうんって
どっかにいなくなるのよね。
聞くだけ聞いて、何もしない。
何もしないどころか、
人の心の中をぐちゃぐちゃにかき乱していくのよ。
どれだけ優しくても、
どれだけ好きでも、
どれだけ心の広い人でも。
私には、そんな面倒な事情が沢山ある。
そんな状況を変えられない自分が一番悪い事、
私は知ってる。
知っているのに何も変えられない自分が
情け無い事も、よく知ってるの。


