恋より先に愛を知る




面会に行くとき、
ベルを鳴らして合図を送り、扉がゆっくりと開く。


私が入ると、その扉はまた固く閉じてしまうの。


私の印象はこう。



〝牢獄“みたい。



悪いことは何もしていないのに、
制限されてしまうの。


その扉の開け閉めが私は怖かったし、
おばあちゃん以外の患者さんの中にはもっと症状が酷くて、
暴れまわって脱走しようとする人だっていた。


私もそうなってしまうの?


そう思うと怖くて怖くて、たまらなかった。


【お婆さんのように、私もなってしまうの?】


私がその文字を見せると、おじいさんは微笑んだ。


「そうなってしまうかは、あんた次第だろうなぁ。
 治る、治すんだって気持ちがありゃあ、
 不思議と気持ちが病気に勝つんだ。

 口で言うのは簡単だろうがね」



気持ちが、病気に勝つ・・・。


その力は、私だって信じてる。


去年、手術をしなければいけない病気を患っていた私だけど、
負けん気のおかげで不思議と元気になったことがあるから。



だけどそれは、彼のおかげなんだけれど・・・。



「あんたぁ。ここでいつも歌っていた歌、
 どっかの国のやつかね」



おじいさんがふいにそう尋ねた。


私はびっくりして少しの間おじいさんを見つめ、
それからペンを走らせた。



【うん。大学で勉強した歌】



「そうか。歌詞には意味がある。
 あれは、どんな歌なんだね?」







この歌は・・・。