恋より先に愛を知る




茜色の空の下、浜辺の上で2人。


ただぼうっと波を眺めていた。


ずっと黙ったまま海を見つめているカイトの
Yシャツの裾を引っ張ると、
カイトは私へと視線を向けた。


【空の色がどうして海に映るのか知ってる?】


「は?なんそれ。急だね」


【海はね、空に恋をしてるんだよ】


私がそう書くと、カイトは私と紙を交互に見つめて、
それからバカにするように笑った。


「アンタ、突っぱねてる割には
 意外とロマンチック満載なこと言うのな」


【いいでしょ。悪い?】


「いや、悪かないけど」


【恋をするとね、自然とその想い人に
 どこか似てくるんだよ】


カイトは尚も書き続ける私に、
何も口を出さずに待った。


【海は空に恋をしてるから、
 同じように青く光って、
 同じようにオレンジに染まるの】


「似てくるっていうのは、分かる気がすんな」


【あなたも恋をしてるの?】


「してるよ。もう2度と、戻れない恋」




カイトは淡々とそう言った。



ああ、この人も私と同じなんだ。
って、そう思った。





もう2度と、戻れない恋―



そういう恋は、この世の中に沢山あるのよ。



私も、カイトも。



報われない恋の行方は誰も知らない。