恋より先に愛を知る




やっぱり嫌。


いくら優しさが見えてきたからって、
苦手なものは苦手で変わらない。


男はやっぱり怖いし、
関わりたくないと思ってしまう。


私が戸惑ってじっとしていると、
カイトは呆れたようにため息をついて私の手を強引に引っ張った。


前のめりに倒れこむと、
カイトの背中にドサッと落ちる。


カイトがバカにしたように笑って立ち上がる。


一度ベンチの上に上がってみると、
そこから思い切りジャンプをした。


声が出ていたら、
私の反応は「うわっ」って。


だけど口が動いただけで、
前を向くカイトには何も聞こえない。


「びっくりした?こういうの
 ダメそうだもんな、あかねちゃん」


カイトが笑いながら歩を進める。


歩き慣れたこの道を、カイトの背に乗って移動する。


普段は見ない高さで周りの景色を眺めると、
まるでそこは来たことのない初めての場所。


背中に体を預けると、
やっぱりあの頃を思い出す。





『ねぇ、ちょっとだけおんぶしてみて!』


『おもっ』


『ちょっと、今重いって言った?』


『違う違う!荷物のが重いなぁって!』


『あはは。ここまででいいよ。ありがとう』





1度だけ、あの背中に乗ったことがある。


重いかな?

どうかな?

大丈夫かな?


そんな乙女心と、子供のような好奇心を交えて。


彼の背中から声をかけると、
彼は笑って応えてくれた。


あの頃が、思い出される。


楽しかった、

幸せだった、


何気ない日々。