「嫌だね。危なっかしくて離せねぇ」
【いいから離して】
「何か考え事してるから上の空なんだろ?
落ち着くまで帰んなよ」
カイトはそう言うと、私をぐいっと立ち上がらせた。
まだ心臓がドクドクと暴れていて落ち着かない。
そんな私を今度は背中に乗せると、カイトはそのまま歩き出した。
【ちょっと!何すんのよ。おろして】
「はぁ?どうせ腰抜かして歩けないだろうが。
黙ってのっかっとけ」
カイトはぶつぶつ文句を言いながら
私を背に乗せて歩いた。
嫌だ、嫌だ。
体が拒否反応を起こして震える。
早く1人になりたいのに。
カイトは私を離してはくれない。
絶対に、私を1人にしてはくれなかった。
近くの古い公園に着くと、私をベンチへとおろした。
カバンからコーラを取り出して一気に飲み干すと、
ゴミ箱へと投げる。
遠く離れたゴミ箱に、カイトの放ったペットボトルは
綺麗に弧を描いてストンと落ちた。
ああ、バスケ部って言ってたっけ。本当だったんだ。
その様子を黙って見ていると、
カイトは私の方を振り返って言った。
「なぁ、なんか飲む?」
私は横に首を振った。
「あかねちゃん。アンタ男だめだろ」
ふいに訊ねるその言葉に、私は目を丸くした。


