恋より先に愛を知る




電車が来るのはあと1時間後。


そんな中こんな人と一緒にいるなんて絶対無理!


私は空を仰ぐ。


今日の空も、陽射しが強い。


空を見上げればなんとなく気持ちが落ち着く。


だけれど、たまに悲しくなる。


この空のどこかにあの人がいると思うと、
苦しくて辛い。


涙が出そうになるのを必死で堪えると、
私は歩き出した。


「ちょっと、おい。何処行くんだよ」


【歩いて帰る。ついてこないで】


ぶっきらぼうにそう突きつけて、
私はさっさと歩いた。


イヤホンをして、音量を上げる。


音楽が鳴り響くと、また思い出す。




『あんまり大音量で聴くなよ?』




わかってるよ。


耳に悪いことも、
歩きながらのイヤホンは危ないってことも。


だけど私には音楽を聴くことが必要なの。


逃げ出したくなる気持ちを抑えてリラックス出来るのは、
音楽の力を借りられているから。


音楽を聴くたび、思い出す。


あの人の声。


だけどあの頃とは違う。
冷たく突き刺さるような声が響く。


私を心配して紡いでくれた言葉も、
今では私を攻撃する言葉に変えられてしまうの。




『だから俺は言ったのに・・・』




私を突き放す言葉。


たった一瞬なのに、
どうしてそのことばかりが思い出されるんだろう。


やめて。

やめて。

そんな声を聞かせないで。



お願いだから、忘れさせてよ・・・っ。







「あかね!」