恋より先に愛を知る




“あかねちゃん”



その響きに最高の嫌悪感を感じた。


カイト。


1週間が経ってやっとわかった。
このしつこい男の正体。


嫌そうな顔をしたのは私だけじゃなかった。


洋ちゃんも同じように・・・ううん。
私よりも嫌そうにカイトを見ていた。


「おい、あかねに触んなよ。お前高校生だろ?」


「高校生、だと何かマズい?」


「いや、まずくはないけど・・・
 だけどあかねの気持ちも考えろよ」


洋ちゃんはカイトに詰め寄るように前へ出てそう言った。


カイトはそれでも余裕有り気に洋ちゃんを見据えると、
嘲るように笑った。


「あれ?もしかしてアンタ、あかねちゃんにフラれた?」


「は?」


「触るな、とか言われたんだろ。
 んで、俺に八つ当たりってか?」


「お前・・・人が黙ってればいい気になって
 ・・・ふざけんなよ」


【洋ちゃん!
 こいつに構わなくていいから早く行って】


なんだかこの雰囲気はまずい・・・。


そう思った私は慌てて洋ちゃんを止めた。


洋ちゃんは私の差し出した紙を見て悲しそうな顔をする。


そうして小さく呟いた。


「・・・お前、あっちで何かあったのか?」


中学の頃とは違う、
大人な顔を見せた洋ちゃんは、続けて言った。


「・・・って、何があったかなんて、
 きっと俺が聞けることじゃねぇんだろうな」


きっと、洋ちゃんはこいつと違って
私の気持ちを汲み取ろうとしてくれてる。


だから、聞きたくても聞けないもどかしさを抑えてる。


大人だね、洋ちゃん。


大人になっちゃったんだね、洋ちゃんは。


私はまだ、子供のまんまだっていうのに。