カフェ・ブレイク

しばらくすると、玲子が舟をこぎ始めた。
小門が玲子をベッドへと運ぶ。

「イイ人ですね、玲子さん。」
なっちゃんが心からそう言ってるのを、苦々しく聞いた。
……まあ、悪人じゃないよな。
見解の相違はスルーした。

「しかし、なっちゃん、お酒強いね。」
けっこうしっかり飲んでるよな。

「そうかもしれません。体内にアルコールが回ってる感覚はあるんですけど、頭までは来ないというか……どこか醒めてるんですよね。」
「ふぅん。じゃあ、酒で失敗することないね。」
別に牽制したわけじゃなかったけれど、なっちゃんはちょっとむくれた。

「酔っ払って無理やり迫るとか、しませんよ!」
……何だ、それ。

「普通、逆じゃないの?女の子がやられるんじゃないの?」
俺の言葉に、なっちゃんは赤くなった。
見た目も言葉も乱れてないだけで、なっちゃん、けっこう酔ってるんじゃないか?

「まあ、俺は飲み過ぎると胃が荒れるから、そこまで飲まんし。安心していいよ。」

なっちゃんは、テーブルに突っ伏した。
「い~じ~わ~る~い!!!」
……絶対酔ってるって、なっちゃん。

「古城はイイ奴だけど、悪い男な部分もあるからねえ。火遊びが大火事になったら危ないよ。」
小門がそんな風に言いながら戻ってきた。

「火事なんか起こさんわ。」
何でだろう。
小門も玲子も、俺となっちゃんをくっつけようとしてる?
結婚が決まってる子だぞ?
めんどくさいことになるじゃないか。

「冗談はさておき……古城、このまま独身貴族で生きんの?」
隣に腰掛けて、小門がそう聞いてきた。

「……そんなつもりもないけど……」
実際、独身主義というわけではない。
ただ……ただ、彼女以上に心を奪われるヒトがいないだけ。
それだけのことだ……。

小門は、机に突っ伏したままのなっちゃんの様子をうかがって、小さな声で言った。
「寝てる。向こうの部屋に布団準備してあるから、運んであげれば?」

俺が?
……まあ、小門が抱き上げるのも変か……。
世話の焼ける子や。

よいしょ、と抱き上げる。
寝てる女は脱力してて重い……はずなのだが……。
……なっちゃん、もしかしてたぬき寝入り?

こみ上げる笑いを我慢して、準備された部屋の布団になっちゃんをそっと下ろした。
風邪引かないように毛布と布団を首までかけてから、固く閉じられたまぶたを見ていた。

不自然だよな。
絶対起きてる。

「今さら俺が言うことじゃないけど、残念。卒業して就職して自立したなっちゃんと、付き合いたかったわ。」

……自分でも思ってもみなかった本音が口をついて出た。