「4年前までフランスに住んでいたので、日本の音楽に馴染みがなくて。ついつい、幼少期から慣れ親しんだ室内楽を好んでしまいます。三つ子の魂百まで、ですね。」
「そうでしたか。……次は、神戸ゆかりの楽団ですよ。バッハ・コレギウム・ジャパン。」
「ああ。女子大のチャペルでの演奏会を聞きに行ったことがあります。温かいイイ雰囲気の楽団でした。」
優しく軽快なバロックオーボエの響きに、心も弾んでくる。
……ヨシトくんのお友達なら、今、大学1回生か。
若くて、華やかな容姿なのに、落ち着いた男だな。
白い肌や高い鼻、明るい瞳や髪に見とれていると、ハーフくんは静かに聞いてきた。
「こちらは歴史のあるお店のようですが、開店当初からコーヒー・カンタータを流していたのでしょうか。」
「ええ。開店時に蓄音機でかけていたレコードが残っています。残っているだけで歪みと摩滅でとても聞けやしませんけどね。……先代の店主は私の祖父なのですが、アメリカに留学してたせいで西洋かぶれが強くて。……太平洋戦争が始まると、敵性音楽は禁止されましたが、バッハは同盟国のドイツ人なのでお目こぼししてもらえたようです。」
そう説明すると、ハーフくんは目を輝かせて俺を見た。
「おじいさま……そうでしたか。」
西洋のおとぎ話の王子さまのようだな。
正面から見つめられると、男の俺でもちょっと照れる。
視線をそらせないでいると、彼は楽しそうに言った。
「僕の祖母の初恋は、あなたのおじいさまだったそうです。」
へ?
「祖母もバッハの世俗カンタータが好きでした。どうやらそれは、あなたのおじいさまの影響だったんですね!今こうして、お孫さんとコーヒー・カンタータを聞けるなんて、感慨深いです。」
「……もしかして、おばあさまは、学校を中退してご結婚されて、旦那さんの海外赴任について行かれたという……」
俺の言葉の途中で、ハーフくんは何度もうなずき始めた。
「そうです。祖父は外交官です。祖母は、音楽学校を中退して結婚せざるを得なかったと聞いています。」
……そうか。
「祖父もあなたのおばあさまが好きだったと聞いています。おばあさまが日本に帰国されるたびにココに寄ってくださるのを、終生楽しみにしていました。」
ハーフくんは少し目を見張ってから、ほほ笑んだ。
「やっぱり!……じゃあ、少し運命の歯車が狂っていれば、あなたと僕は同一人物か、近しい家族だったかもしれませんね。」
「それは……奇縁ですね。」
「そうでしたか。……次は、神戸ゆかりの楽団ですよ。バッハ・コレギウム・ジャパン。」
「ああ。女子大のチャペルでの演奏会を聞きに行ったことがあります。温かいイイ雰囲気の楽団でした。」
優しく軽快なバロックオーボエの響きに、心も弾んでくる。
……ヨシトくんのお友達なら、今、大学1回生か。
若くて、華やかな容姿なのに、落ち着いた男だな。
白い肌や高い鼻、明るい瞳や髪に見とれていると、ハーフくんは静かに聞いてきた。
「こちらは歴史のあるお店のようですが、開店当初からコーヒー・カンタータを流していたのでしょうか。」
「ええ。開店時に蓄音機でかけていたレコードが残っています。残っているだけで歪みと摩滅でとても聞けやしませんけどね。……先代の店主は私の祖父なのですが、アメリカに留学してたせいで西洋かぶれが強くて。……太平洋戦争が始まると、敵性音楽は禁止されましたが、バッハは同盟国のドイツ人なのでお目こぼししてもらえたようです。」
そう説明すると、ハーフくんは目を輝かせて俺を見た。
「おじいさま……そうでしたか。」
西洋のおとぎ話の王子さまのようだな。
正面から見つめられると、男の俺でもちょっと照れる。
視線をそらせないでいると、彼は楽しそうに言った。
「僕の祖母の初恋は、あなたのおじいさまだったそうです。」
へ?
「祖母もバッハの世俗カンタータが好きでした。どうやらそれは、あなたのおじいさまの影響だったんですね!今こうして、お孫さんとコーヒー・カンタータを聞けるなんて、感慨深いです。」
「……もしかして、おばあさまは、学校を中退してご結婚されて、旦那さんの海外赴任について行かれたという……」
俺の言葉の途中で、ハーフくんは何度もうなずき始めた。
「そうです。祖父は外交官です。祖母は、音楽学校を中退して結婚せざるを得なかったと聞いています。」
……そうか。
「祖父もあなたのおばあさまが好きだったと聞いています。おばあさまが日本に帰国されるたびにココに寄ってくださるのを、終生楽しみにしていました。」
ハーフくんは少し目を見張ってから、ほほ笑んだ。
「やっぱり!……じゃあ、少し運命の歯車が狂っていれば、あなたと僕は同一人物か、近しい家族だったかもしれませんね。」
「それは……奇縁ですね。」



