カフェ・ブレイク

「妻と桜子に逢って行かれますか?」
内心ドキドキしながらも、俺は鷹揚に言った。

ヨシトくんの顔が一瞬悲しげに曇ったけれど、すぐに笑顔を作って見せた。
「写真を拝見しただけで充分ですよ。あんな幸せそうな心からの笑顔、初めて見ました。」

「……そうですか。」
心の中でホッとした。

「ずっと1人でつらい想いをしてるんじゃないかと心配でした。……笑顔でいてくれるなら、それでいい。」
ヨシトくんはそう言ってから、目を閉じて、言葉を継いだ。
「……俺にあなたほどの包容力があれば、あるいは……」

まつげ長い……鼻筋がすーっと通った、綺麗な顔だな。
ぼんやりと見とれていると、ヨシトくんが目を開けた。

「いや、未練ですね。」
自嘲的な微笑が痛々しかった。

ごめんごめんごめんごめんごめん……心の中で何度も繰り返して謝った。

ヨシトくんは、会釈して店を出て行った。




……これでよかったんだろうか。

自信がなくて、何となく、ドアを開けてヨシトくんの背中を見送った。
小さくなっていくヨシトくん……あれ?

目の端に、よく見知った人影が映った。
驚いて、そっちに視線をやる。

小門と、真澄さん?
……2人が、手をつないで歩いていた。

えーと……いや、戸籍上は夫婦なんだから問題はないんだけど……

2人は、俺に気づくことなく……いや、たぶん、お互いしか目に入ってないのだろう。
何度も視線をからませ、ほほ笑み合って、寄り添い歩いてった。

……そっかぁ。
あの2人、よりが戻ったのか。

そうか。

そうなのか。

……玲子……大丈夫かな。




ぼんやりしてると、正面からなっちゃんが走ってきた。
「章(あきら)さんっ!!!」
涙目で俺を呼び、言葉にならないことを言いながら泣き出した。
……方向とタイミングから考えて、ヨシトくんに出くわしてしまったのか。

「逢った?」
そう聞くと、なっちゃんは目をうるうるさせて、俺にしがみついて嗚咽した。
「……ダメだよ。幸せ~、って、笑ってないと、あいつが心配するよ。」
背中をさすって、宥める。

「ココに、来たの?」
なっちゃんがしゃくりながら聞いた。

「うん。ハーフのお友達と。あ、彼はまだ店に居るよ。……そうだ、中沢さんと郡さんも来てるよ。今日は千客万来だな。」

おもしろいぐらいに、ピタッと、なっちゃんは泣き止んだ。

「彼とは何か話した?」
「……義人くん?……うん。謝られた。……謝るのは私のほうなのに。」
「桜子の父親はオヤジだと勘違いしたみたい。」

なっちゃんは微妙な顔をした。
「……それはどうかしら。」

「彼、何か言ってた?」
「ううん。ただ、私と桜子を守れなくてごめん、って。」
「……そうか。」

食えない奴。
やっぱりオヤジと似てるな。

……まあでも……桜子となっちゃんを奪われる恐れはなくなった……気がする。

心の中に常にあった不安が、やっと晴れそうだ。