その日の午後、竹原オヤジの秘書がやって来ていろんなものを置いて帰ったらしい。
店に出てた俺は会えなかったが、「インテリやくざ」となっちゃんが形容する男……見てみたかったな。
まあ、また機会はあるだろう。
竹原オヤジは、つかず離れず、桜子となっちゃんを見守るつもりらしい。
……しかし生まれたその日に、桜子名義の株と通帳を渡されたのには……さすがに驚いた。
用意周到な奴!
春が来て、夏が過ぎ、秋が来た。
桜子はすくすくと成長している。
笑顔がとにかく愛らしくて、なっちゃんが店に連れてくる度に、常連さん達もデレデレになる。
もちろん一番デレるのは、俺だ。
さすがに、店に家族写真や子供の写真を飾ることは控えたが、小門の「頼之くんスクラップ」の横に、革の表紙のアルバムが並んでいる。
ページを開くと、ウェディングドレスのなっちゃんが桜吹雪の中で豪快に笑っている写真や、桜子の愛らしい笑顔や紅葉のような手形を、いつでも見ることができた。
「マスター、珍しいお客さんを連れてきたよ。」
ある日、飄々とそう言いながら、昔風のイケメンがやってきた。
「……いらっしゃいませ。ご無沙汰いたしております。」
珍しいのはお前もだろう!と、つっこみたいのを我慢して、笑顔でそう迎えた。
彼が前に来たのは、2年前?
これで、4度めぐらいの来訪でしかない。
なのに、こういうキャラなのか、まるで常連のように周囲と盛り上がり、何時間も騒いでいくのだ。
彼の名前は、たぶん、中沢さん。
……なっちゃんを呼び出したほうがいいのかな。
ちょっと戸惑いながら、迎え出た。
中沢さんは当然のようにカウンターに座ってから、戸口の男を呼んだ。
「ほら、早く入っておいでって。」
「いらっしゃいませ。どうぞ。」
極上の営業スマイルを向けた先には……冴えない中年の小デブ……見るからにお育ちの良さそうな、おっとりした雰囲気のおっさんだった。
新規のお客様は、俺の営業スマイルをじっと見て、ホッとしたらしく、やっと中に入ってきた。
「ほら、ここ。座って。マスター、ブレンドちょうだい。2つー。」
「……先にタレーランじゃなくて、よろしかったですか?」
中沢さんは毎回両方飲んで行くのだが、どうしても、クリアーなほうを後に注文されるので、こちらとしては気を遣うのだ。
「いいのいいの。どうせゆっくりするから。ねー?」
「いえ、私はすぐに失礼します。」
新規のお客様はそう言ったけれど、中沢さんは彼の手をガッチリと両手で掴んだ。
……こういうところが、ゲイっぽいんだよな、このヒト。
店に出てた俺は会えなかったが、「インテリやくざ」となっちゃんが形容する男……見てみたかったな。
まあ、また機会はあるだろう。
竹原オヤジは、つかず離れず、桜子となっちゃんを見守るつもりらしい。
……しかし生まれたその日に、桜子名義の株と通帳を渡されたのには……さすがに驚いた。
用意周到な奴!
春が来て、夏が過ぎ、秋が来た。
桜子はすくすくと成長している。
笑顔がとにかく愛らしくて、なっちゃんが店に連れてくる度に、常連さん達もデレデレになる。
もちろん一番デレるのは、俺だ。
さすがに、店に家族写真や子供の写真を飾ることは控えたが、小門の「頼之くんスクラップ」の横に、革の表紙のアルバムが並んでいる。
ページを開くと、ウェディングドレスのなっちゃんが桜吹雪の中で豪快に笑っている写真や、桜子の愛らしい笑顔や紅葉のような手形を、いつでも見ることができた。
「マスター、珍しいお客さんを連れてきたよ。」
ある日、飄々とそう言いながら、昔風のイケメンがやってきた。
「……いらっしゃいませ。ご無沙汰いたしております。」
珍しいのはお前もだろう!と、つっこみたいのを我慢して、笑顔でそう迎えた。
彼が前に来たのは、2年前?
これで、4度めぐらいの来訪でしかない。
なのに、こういうキャラなのか、まるで常連のように周囲と盛り上がり、何時間も騒いでいくのだ。
彼の名前は、たぶん、中沢さん。
……なっちゃんを呼び出したほうがいいのかな。
ちょっと戸惑いながら、迎え出た。
中沢さんは当然のようにカウンターに座ってから、戸口の男を呼んだ。
「ほら、早く入っておいでって。」
「いらっしゃいませ。どうぞ。」
極上の営業スマイルを向けた先には……冴えない中年の小デブ……見るからにお育ちの良さそうな、おっとりした雰囲気のおっさんだった。
新規のお客様は、俺の営業スマイルをじっと見て、ホッとしたらしく、やっと中に入ってきた。
「ほら、ここ。座って。マスター、ブレンドちょうだい。2つー。」
「……先にタレーランじゃなくて、よろしかったですか?」
中沢さんは毎回両方飲んで行くのだが、どうしても、クリアーなほうを後に注文されるので、こちらとしては気を遣うのだ。
「いいのいいの。どうせゆっくりするから。ねー?」
「いえ、私はすぐに失礼します。」
新規のお客様はそう言ったけれど、中沢さんは彼の手をガッチリと両手で掴んだ。
……こういうところが、ゲイっぽいんだよな、このヒト。



