……なるほどな。
確かに、たとえ愛人でも、高校生より大企業の社長のほうが納得しそうだな……特にあの母親なら。
「そっか。……じゃあ、なるべく早く、お父さんとお母さんを安心させてあげような。」
そう言いながら、車を出した。
「……はい。」
なっちゃんはうれしそうに俺の腕に指を絡めた。
「え?何?ここ?なんで?」
てっきり帰宅すると思っていたらしいなっちゃんは、俺が区役所の駐車場に入ったことに驚いていた。
「婚姻届、もらってくんの。一緒に行く?……ほんとはさっさと提出してしまいたいけど、ハンコ持ってきてないし、証人欄も埋めなきゃいけないし。……ああ、なっちゃん、本籍移してるんだっけ?戸籍抄本もいるな。」
なっちゃんは目も口も大きく開けて驚いていた。
子供みたいな無防備な顔がかわいくて、俺はちょっと笑ってしまった。
「待ってて。鍵かけて行くから。誰か来ても開けたらあかんよ。」
区役所の時間外窓口で婚姻届を2通もらって車に戻ると、なっちゃんは目を閉じていた。
寝てるのかな。
ほんのちょっとの時間なのに……妊婦さんは眠いのか?
……そういえば、俺、妊婦について何も知らない……これからはもっと積極的に勉強していかなきゃな。
予定日まで3か月以上ある。
まだまだ、このお腹、大きくなるんだよな。
……大丈夫かな。
心配だ。
なっちゃんを起こさないように、そーっと車に乗り込んで、静かに発車させた。
傍らに、愛しいヒトの安らかな寝息。
……幸せってこういうことかもな。
運転中なのに、不覚にも涙が浮かんでくる。
危ない危ない。
袖で目元をグイッと拭いて、いつも以上に安全運転に努めた。
何度拭いても、光が滲んで仕方なかった。
タワーマンションの最上階……ここからでも充分、神戸の夜景は楽しめるのだが、母親はとっくに飽きているので、いつも早々にカーテンを引いていた。
「遅-い!連れ出すのは止めないけど、妊婦さんなんだから、もっと早く帰してちょうだい!」
ぷりぷりと俺に文句を言う母親に、早速、婚姻届を突きつけた。
「帰したくなくなった。ずっと一緒にいたいから結婚する。証人欄にサインとハンコちょうだい。」
母は、マジマジと俺を見て、ため息をついた。
「……いくつよ、あんた。それが結婚の理由?そんなもんで納得できるか!」
まるで、俺の母じゃなくて、なっちゃんの保護者だな。
「理由は、いっぱいある。いちいち全部言えるか!」
母親につられて、俺も、ついそんな風に喧嘩腰で言ってしまった。
後ろから、なっちゃんが俺の手をグイッと引いた。
「章(あきら)さん、お願い。イライラしないで。」
うるうるの瞳でそう言われると、俺の心は驚くほどに穏やかに落ち着いた。
確かに、たとえ愛人でも、高校生より大企業の社長のほうが納得しそうだな……特にあの母親なら。
「そっか。……じゃあ、なるべく早く、お父さんとお母さんを安心させてあげような。」
そう言いながら、車を出した。
「……はい。」
なっちゃんはうれしそうに俺の腕に指を絡めた。
「え?何?ここ?なんで?」
てっきり帰宅すると思っていたらしいなっちゃんは、俺が区役所の駐車場に入ったことに驚いていた。
「婚姻届、もらってくんの。一緒に行く?……ほんとはさっさと提出してしまいたいけど、ハンコ持ってきてないし、証人欄も埋めなきゃいけないし。……ああ、なっちゃん、本籍移してるんだっけ?戸籍抄本もいるな。」
なっちゃんは目も口も大きく開けて驚いていた。
子供みたいな無防備な顔がかわいくて、俺はちょっと笑ってしまった。
「待ってて。鍵かけて行くから。誰か来ても開けたらあかんよ。」
区役所の時間外窓口で婚姻届を2通もらって車に戻ると、なっちゃんは目を閉じていた。
寝てるのかな。
ほんのちょっとの時間なのに……妊婦さんは眠いのか?
……そういえば、俺、妊婦について何も知らない……これからはもっと積極的に勉強していかなきゃな。
予定日まで3か月以上ある。
まだまだ、このお腹、大きくなるんだよな。
……大丈夫かな。
心配だ。
なっちゃんを起こさないように、そーっと車に乗り込んで、静かに発車させた。
傍らに、愛しいヒトの安らかな寝息。
……幸せってこういうことかもな。
運転中なのに、不覚にも涙が浮かんでくる。
危ない危ない。
袖で目元をグイッと拭いて、いつも以上に安全運転に努めた。
何度拭いても、光が滲んで仕方なかった。
タワーマンションの最上階……ここからでも充分、神戸の夜景は楽しめるのだが、母親はとっくに飽きているので、いつも早々にカーテンを引いていた。
「遅-い!連れ出すのは止めないけど、妊婦さんなんだから、もっと早く帰してちょうだい!」
ぷりぷりと俺に文句を言う母親に、早速、婚姻届を突きつけた。
「帰したくなくなった。ずっと一緒にいたいから結婚する。証人欄にサインとハンコちょうだい。」
母は、マジマジと俺を見て、ため息をついた。
「……いくつよ、あんた。それが結婚の理由?そんなもんで納得できるか!」
まるで、俺の母じゃなくて、なっちゃんの保護者だな。
「理由は、いっぱいある。いちいち全部言えるか!」
母親につられて、俺も、ついそんな風に喧嘩腰で言ってしまった。
後ろから、なっちゃんが俺の手をグイッと引いた。
「章(あきら)さん、お願い。イライラしないで。」
うるうるの瞳でそう言われると、俺の心は驚くほどに穏やかに落ち着いた。



