「じゃあ、あのヒトとはそういう関係じゃない?」
なっちゃんはちょっと自虐的に笑った。
「うん。笑っちゃうけど、みーんな誤解してるの。……義人くん……この子の父親に当たる子も、私が要人さんの愛人だと思ってる。……だから、それを逆手に取ることにしたの。」
ヨシト。
俺の中に一生消えないだろう名前がインプットされた。
もし生まれた子供が男の子でも、このさきオスのペットを飼っても「ヨシト」と言う名前だけは絶対に付けさせない。
「……そんなに大事?……不倫の汚名をかぶっても、そいつを守りたかった?」
なっちゃんの眉毛が苦しそうに歪んだ。
たまらず俺は、なっちゃんを抱き寄せた。
「他人にどう想われてもいいから、とにかくこの子を産んで育てたかったの。」
なっちゃんの言い方に首を傾げた。
「なあ?それって……子供の父親すら『他人』扱いなわけ?」
返事はなかった。
ただ、なっちゃんは声を押し殺して泣いていた。
ちょっとイラッとした。
「……我慢しなくていい、ってば。泣くなら声をあげて泣けばいいから。怒らないし、呆れないから。ちゃんと、聞かせて。」
「嘘。怒ってるもん。呆れてるもん。」
なっちゃんが俺の腕の中で顔を上げた。
濡れた瞳とこぼれた涙がキラキラしていて、160度のパノラマ夜景より綺麗だと感じた。
……敵わない。
そっと、なっちゃんの唇に口づけた。
苛立ちが、怒りや侮蔑ではないことを伝えたくて、ただ優しいキスを重ねた。
夜風は、思った以上に、体から熱を奪ったらしい。
なっちゃんの身体をぎゅっと抱きしめてから、そっと離した。
「頬も、唇も、冷たい。車に戻ろう。風邪ひくわ。」
名残惜しそうななっちゃんの手を引いて、車の助手席に導いた。
フロントグラスからの夜景を眺めながら、俺はさっきの苛立の意味を考えて言葉にした。
「たぶん、不安。……いつか、お腹の子の父親が現れて、なっちゃんと子供を連れてってしまうんじゃないか、って。」
なっちゃんは、俺の顔を見て、うなずいた。
「それなら、わかる。私も不安。……要人(かなと)さんは、ああ言ったけど……義人くんが全てを知ったら……怖すぎる……」
どういう意味だ?
「どんな奴?オヤジ譲りのワンマン?」
なっちゃんは、言葉を選びながら言った。
「……およそ、女の子の憧れるモノは全て兼ね備えた、とっても恵まれた子。でも、むくわれない恋にしか本気になれない、かわいそうな子。」
なるほど。
見なくてもわかるような気がした。
なっちゃんはちょっと自虐的に笑った。
「うん。笑っちゃうけど、みーんな誤解してるの。……義人くん……この子の父親に当たる子も、私が要人さんの愛人だと思ってる。……だから、それを逆手に取ることにしたの。」
ヨシト。
俺の中に一生消えないだろう名前がインプットされた。
もし生まれた子供が男の子でも、このさきオスのペットを飼っても「ヨシト」と言う名前だけは絶対に付けさせない。
「……そんなに大事?……不倫の汚名をかぶっても、そいつを守りたかった?」
なっちゃんの眉毛が苦しそうに歪んだ。
たまらず俺は、なっちゃんを抱き寄せた。
「他人にどう想われてもいいから、とにかくこの子を産んで育てたかったの。」
なっちゃんの言い方に首を傾げた。
「なあ?それって……子供の父親すら『他人』扱いなわけ?」
返事はなかった。
ただ、なっちゃんは声を押し殺して泣いていた。
ちょっとイラッとした。
「……我慢しなくていい、ってば。泣くなら声をあげて泣けばいいから。怒らないし、呆れないから。ちゃんと、聞かせて。」
「嘘。怒ってるもん。呆れてるもん。」
なっちゃんが俺の腕の中で顔を上げた。
濡れた瞳とこぼれた涙がキラキラしていて、160度のパノラマ夜景より綺麗だと感じた。
……敵わない。
そっと、なっちゃんの唇に口づけた。
苛立ちが、怒りや侮蔑ではないことを伝えたくて、ただ優しいキスを重ねた。
夜風は、思った以上に、体から熱を奪ったらしい。
なっちゃんの身体をぎゅっと抱きしめてから、そっと離した。
「頬も、唇も、冷たい。車に戻ろう。風邪ひくわ。」
名残惜しそうななっちゃんの手を引いて、車の助手席に導いた。
フロントグラスからの夜景を眺めながら、俺はさっきの苛立の意味を考えて言葉にした。
「たぶん、不安。……いつか、お腹の子の父親が現れて、なっちゃんと子供を連れてってしまうんじゃないか、って。」
なっちゃんは、俺の顔を見て、うなずいた。
「それなら、わかる。私も不安。……要人(かなと)さんは、ああ言ったけど……義人くんが全てを知ったら……怖すぎる……」
どういう意味だ?
「どんな奴?オヤジ譲りのワンマン?」
なっちゃんは、言葉を選びながら言った。
「……およそ、女の子の憧れるモノは全て兼ね備えた、とっても恵まれた子。でも、むくわれない恋にしか本気になれない、かわいそうな子。」
なるほど。
見なくてもわかるような気がした。



