カフェ・ブレイク

「コーヒー、本当に美味しいですよ。すっかり気に入ってしまいました。……また来てもよろしいですか?」

「え~~~。要人さん、また来るの~~~?お手紙だけって言ったのにぃ……」
不満そうななっちゃんに、オヤジは苦笑した。

「だって、夏子さんが幸せそうで安心したから。……今の夏子さんを見たら、例え由未から所在がわかって来ても、諦めざるを得ないだろう。己の力不足を知るにはちょうどいいかもしれない。」

……誰の話だ?
お腹の子の父親か?
いったい……このオヤジは……誰だ?

「じゃあね。夏子さん。また来るよ。」
「手ぶらで来たら入れてあげないから!」

なっちゃんはそんな風に言いながらも、笑顔でオヤジを見送った。
緊張感がとけた店内は、それでもまだ微妙な空気だったけれど。

その夜。
夕食後に、なっちゃんを夜のドライブに誘い出した。
「どこに行きたい?摩耶山?ビーナスブリッジ?」
神戸の夜景と言えば……な、スポットを挙げて聞いてみた。

なっちゃんは、ちょっとためらってから、意を決したように言った。
「芦有ドライブウェイの東六甲展望台。」
……なっちゃんの生家の近く、か。

「いいけど、この車じゃカーセックスは無理だよ。」
そう言ってからかったつもりだったけれど、なっちゃんは苦笑するだけだった。
緊張してるのかな?

平日の夜でも、展望台は賑わっていた。
せっかくなので車を降りて、パノラマ夜景を眺めた。
遮るものが何もない横に長い光の帯は美しかったけれど、山の夜風は冷たい。

「身体が冷えるから、車に戻ろうか?」
そう聞いたけど、なっちゃんは柵の前から動かなかった。

……少し震えてるように見えるんだけど……寒いわけじゃないのかな。
とりあえず、着ていた薄手のコートをなっちゃんに羽織らせた。

「ありがとう。……聞かないんですか?要人さんのこと。」
「聞いて欲しいなら、聞いてやるけど?」

なっちゃんはちょっと黙って、ため息をついてから、言った。
「聞いてください。」

俺もまた、ため息をついてから、言った。
「……で、あのヒトとはどういう関係?怒らないから、ちゃんと言いなさい。」

なっちゃんは、まっすぐ俺を見て言った。
「お腹の子供のおじいちゃん。」

……てことは……

「あのヒトの息子さんが、相手?……って、いくつだよ。」
「今、高校3年生。」
なっちゃんは、きゅっと目をつぶってそう言った。

……マジかよ。

頼之くんと同い年って?

……なっちゃん……守備範囲広すぎ……。