カフェ・ブレイク

五山の送り火は、東山の大文字から順番に点火されて、消えて行った。
室内灯を再びつけて、お料理を作ってくださったシェフにお礼を言った。

運転手の井上さんに、れいちゃんを駅まで送ってくださるように電話をする。
はるちゃんは、いつの間にか浴衣から山ガールの格好に着替えていた。
早変わり!さすが!

「ちゃんとヘッドライトも持って来てるんですよ~。」
そう言って頭にライトを装着したはるちゃんは……
「はるちゃん、変!……八つ墓村?」
れいちゃんにそう言われて、はるちゃんは慌ててヘッドライトを取った。

「まあ……八つ墓村は左右に2本だけど……確かに、ちょっと……」
かわいらしいフェアリーに「変」とはさすがに言えなかった。

「でも、今すぐ登らないんでしょ?うちでゆっくり着替えてよかったのに。」
応接室を出て、エレベーターに向かいながらはるちゃんにそう言った。

「あの……れいちゃんに荷物を持って帰ってもらおうと思って。」
はるちゃんは恥ずかしそうにそう言って、れいちゃんにキャリーバッグを渡した。

「はいはい。はるちゃん、明日のお稽古遅刻しないでよ。」
……明日もお稽古なのに、はるちゃん、夜中に登山って……元気だなあ。

「じゃ、数時間でも仮眠して行けば?」
「はい!お願いします。」
ニコニコしてるはるちゃんがかわいくて、私も笑顔になってくる。
本当は、はるちゃんについて行ってあげたいけど……義人くんが来るのなら……

上から到着したエレベーターには、高校生ぐらいの男子が2人と女子が3人乗っていた。
……ちゃらい雰囲気の華やかな子達なんだけど、懐中電灯とヘッドライトを手に持って、リュックを背負って……もしかして……?

「え~?自分、大文字登るん?」
女の子がはるちゃんを指さしてそう聞いた。

「え?あなた達も?」
はるちゃんの目がキラキラと輝いた。

エレベーターが1階に降りる、ほんのわずかな時間で、6人は盛り上がって意気投合したようだ。
結局、はるちゃんは、義人くんの夜遊び仲間に合流して、一緒に消し炭を拾いに行くことにしたらしい。

別の意味で不安も生じたが、はるちゃんはふわふわしてるようで意外としっかりしてる、とのれいちゃんの言葉を信じて、ビルの前で別れた。
また遊びに来てね。

はるちゃん達一行を見送ってから、れいちゃんは井上さんの運転する車に乗り込んだ。
「今夜は、ありがとうございました。社長さんにもよろしくお伝えください。それから……あの……」
れいちゃんは一瞬ためらってから、思い切って言った。

「今度、息子さん?紹介してください!」

ドクン!と、低く大きく心臓が鳴った。