カフェ・ブレイク

「……そのほうが楽?ほな……」
義人くんは床にべったり座って、私の頭を自分の太腿に乗っけた。
膝枕……エレベーターの中で膝枕……おかしいけど……心地いい。

さらりと、義人くんの指が私の髪を撫でた。
くすぐったいような、恥ずかしいような、甘酸っぱい感情で満たされる。

視線を上げると、義人くんと目が合った。
どちらからともなく、ふっと微笑み合う。

お互いに、相手の反応と、自分の心に戸惑い、いったん視線をそらす。
でも、引き合うように再び見つめ合う。

この感情を、どう表現すればわかってもらえるのだろう……。
ただ、愛しい。
笑っていてほしい。
……それだけなのに。

「好き、って気持ちだけじゃ、ダメ?」
私は思わずそう言っていた。
「約束が必要?将来が必要?今、こうして、求め合ってるだけじゃ、ダメ?」

義人くんが心底驚いたような顔をしてる。
「義人くんが好きなの。君の笑顔が見たいの。」
涙が両目からあふれて、こめかみを伝って落ちていく。

義人くんは私の涙を指で抑えるように拭ってくれた。
「うん。俺も同じ気持ち。意地はるの、阿呆らしくなってきたとこ。……夏子さんに先こされたわ。」

そう言って、義人くんは私の両脇に腕を入れて、抱き起こしてから、ぎゅーっと抱きしめた。 
「ごめん。俺も、夏子さんの笑顔が見たい。夏子さんと一緒にいたい。それ以上は、もう、望まへんから。」

……気持ちが、愛情が、染み込んでくる。
好き。
ただ、好き。
お願いだから、笑顔を見せてほしい。
それだけ……。


「顔色、戻ってる。吐き気、おさまった?」
しばらくして、そっと義人くんが腕の力を緩めて、私の顔を覗き込んだ。

「うん?……うん。忘れてた。大丈夫みたい。」
ふっと義人くんが笑った。
「じゃあ……いい?」

「何が?」
なまめかしさすら感じるほほ笑みは、聞くまでもなかった……。

「夏子さん、すごく煽情的な格好してる。」
「……君がやったのよ?」

帯も、伊達帯も、腰紐すら解かれ、浴衣を羽織っているだけの状態。
「うん。ちゃんと責任は取る。」

そう言って、義人くんは私から浴衣をはぎ取った。
「エレベーター開いたらどうするの!」

「誰も来いひん。ロックしてるもん。……なあ、さっきみたいに呼んで。『君』じゃなくて名前で。」
そう言いながら義人くんは、私の顔を両手で包み込んだ。

「……義人くん?」
私がそう言うと、義人くんはニコーッと笑った。

そういえば、ほとんど名前で呼んだことないかも。
癖になってしまったら外でも呼んでしまいそうだから、敢えて「君」って呼んでいた。
そんなことも、気にしてたのかな。

「義人くん。」
もう一度そう呼んでみた。

自然と、ほほ笑みを交わす。

そのまま義人くんの顔が近づいてきて、深い深いキス。

魂が吸い取られるんじゃないかってぐらい、奥の奥までむさぼられた。