カフェ・ブレイク

終業時間はとっくに過ぎてるとは言え、今日は平日。
まだ残ってらっしゃっる社員さんもいるだろう。

かなり抵抗感があったのだが、受付のところに、秘書の原さんが待ってくださっていた。
「大瀬戸さま。こちらへ。」

原さんは、れいちゃんとはるちゃんのキラキラオーラに動じることなく、むしろ冷笑を浮かべたまま奥の重役フロア専用エレベーターへ案内してくれた。

「要人(かなと)さんにご挨拶できますか?」
「社長はまもなく出られますが……そうですね、少しなら何とか。」

会食があるって言ってらしたっけ。
でも、いらっしゃるならやっぱり挨拶すべきよね、うん。

最上階は敷いてある絨毯まで違った。
れいちゃんのピンヒールが埋まるほど毛足の長い絹の絨毯を踏みつけて歩いていると、正面のドアが開いて要人さんが姿を見せた。

「おや、夏子さん。浴衣を見せに来てくれましたか?」
一分の隙もないスーツ姿の要人さんがシトラスの香りを身にまとって近づいてきた。

「こんにちは、要人さん。今日はありがとうございます。こっちが教え子のれいちゃん、こちらはれいちゃんの同期のはるちゃん。かわいいでしょ?もしよろしければ、タニマチになってあげてくれません?……でも手は出しちゃダメですよ、2人とも未成年ですから。」

私が一気にそう言うと、原さんの眉毛がぴくぴくと引きつり上がり、要人さんは逆に目尻を下げて笑った。

「なるほど。では社として検討しましょう。原。資料を揃えておいてくれ。では、夏子さん。お嬢さんがた。いずれまた、あらためて。」
それだけ言って、要人さんはエレベーターに乗り込み、行ってしまった。

「……すみません。原さんに、余計な手間をかけさせちゃいます?」
恐る恐るそう聞いてみたけど、原さんは表情を消してクールに言った。
「それが私の仕事ですから、お気になさらずに。……どうぞ。アペリティフはいかがなさいますか?……ああ、おふたかたは未成年でしたね。」
絶対不機嫌モードだ。

私たちを応接室に案内し、れいちゃんにペリエ、はるちゃんにジンジャエールを入れてくれてから、原さんは極めつけのイケズを残して出て行った。
「ああ。屋上で義人さんがお友達とバーベキューをされるそうです。度が過ぎた遊びをされるお友達が多いようなので、お嬢さまがたはお会いしないほうがいいかと……。では、失礼します。」

度が過ぎた遊び、ね。

……もう!